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●これまでのキズの手当てに対する考え方
擦りキズや切り傷に対して、すぐに市販の消毒液を吹きかけたり、乾かそうとパウダー状の消毒薬を吹きかけたりすることがよくあります。また、キズが治るまでは水に濡らしてはいけない、風呂に入ってはいけない、などというのが昔からの考え方ですた。今でも医療施設によっては、そのように指導しており、特に頭のキズでは周りの毛を剃り、抜糸や治るまでの一週間や十日間は洗髪を禁止され、フケだらけになっていることを見かけます。
●消毒液は本当に必要か?
昔は赤チン、今ではイソジン液、マキロン液などの市販薬がありますが、赤チンは有機水銀を含んでいたため、ほとんど見かけなくなりました。また、イソジン液にはヨードが、マキロン液には逆性石鹸が含まれており、これらは殺菌作用と同時に正常の細胞や組織を障害する作用があることをご存じの方は少ないと思います。特にイソジン液は濃度が低くなれば殺菌作用はなくなりますが、組織に対する有害作用はなくならないというデータがあります。さらに消毒液でかぶれなどのアレルギー症状を起こすこともあります。
●キズは乾かした方が治りやすいか?
キズを負ってまもなく、その表面にはキズを治そうとする物質が流れてきます。そして48〜72時間後に浅いキズでは、その周りや毛根から新しい細胞がキズの表面を覆うようになります。乾いた状態では、これらの働きが妨げられるため、キズの治りには湿潤している状態の方が適していることになります。特にパウダー状の消毒薬は、キズを治すというよりも消毒効果を期待しての使用になります。またパウダーがかかっている状態では、キズの治り具合を観察できないことも注意しなければなりません。
●キズを濡らしてはいけないのか?
キズを濡らしてはいけないという概念は、恐らく水道水には雑菌が入っている、という先入観から出た考え方だと思います。しかし日本の水質基準(ほぼ全国共通)では一般細菌は100個/ml以下、大腸菌に至っては検出されないことになっており、水道水で濡れたからキズが膿むことにはならず、感染はむしろ異物が入っていることや、体の免疫機能が落ちているなど、ほかに原因があると考えるべきであります。特に細かい砂などが入ったキズの初期治療として、水道水でよく洗うことが大切であり、砂が埋もれてしまうと入れ墨の様になるため、医療機関にかかるとわざわざ麻酔をした上で歯ブラシなどを使って異物を擦り取ることもあります。
●最後に
今回の内容はあくまで浅い切りキズや擦りキズに関する形成外科医全般の考え方であり、すべての医師に共通するものではありません。なお、深いキズやヤケド、手術で縫合したキズの手当てについては、専門医の指示に従ってください。 |
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